知っておきたい2024パリオリンピックの話|大会形式や代表選出など

2023/04/03

近年ブレイクダンスはスポーツとしての普及・競技人口の増加をたどり、「Breakin」の名称で2024年パリオリンピックの正式な競技種目となった。
BBoy/BGirlにとってオリンピックの「Breakin」は関心が高いものの、その詳細は特に代表者の選考過程が複雑なこともあって、意欲的に情報収集しないとどのように運営されていくのか実態がよくわからない。当記事では、各種予選会やオリンピック本戦を迎えるにあたって知っておきたい情報をまとめている。

目次

  • なぜオリンピック競技種目となったのか
  • どのような形式で行われるのか
  • どのように出場者が選出されるのか
  • 誰が有力候補なのか

なぜオリンピック競技種目となったのか

まず前提として、オリンピックはコストや収容規模の兼ね合いから競技数が際限なく増えないように、各開催での上限を28競技としている。また時代により人々の関心とスポーツの人気は移りゆくため、IOC(国際オリンピック委員会)は開催ごとに競技・種目を入れ替えている。

新競技選定の際は競技する人や国の数、TV視聴率や観戦チケットの売れ行きなど、多くの項目を総合的に評価する。2020東京オリンピックでは、「スケートボード」「スポーツクライミング」「サーフィン」が競技として追加、また自転車競技に「BMX」種目、バスケットボール競技に「3x3」種目が追加されるなど、若い世代への訴求を強めるためか、近年はアーバンスポーツが多く採用される傾向にある。そうした潮流を背景に2024パリオリンピックではブレイクダンスが「Breakin」として正式に競技化された。

その主な理由としては、

  • 集客実績
    (2018アルゼンチンユースオリンピックで既に競技種目として実施され一定数以上を動員した)
  • 競技人口
    (世界的に増加している。例えばストリートダンス人口は日本国内でも600万との調査結果があり、ブレイクダンスは最も競技者が多い)
  • 国の経済力が影響しにくい
    (大規模な設備投資が必要なスポーツではない)
  • 平和精神
    (ブレイクダンスのルーツであるHiphopの精神とオリンピックの開催意義がマッチする)

などが特に評価されたと言われる。

どのような形式で行われるのか

競技形式

Breakin競技では「BBoy(男子種目)」「BGirl(女子種目)」の2種目が行われる。いずれも1vs1のバトルスタイル。
参加者は男女各16名のみ。オリンピックまでの各種予選会ではこの16の席を賭けて全世界のブレイクダンサーがしのぎを削る。各国からは最大で男女2名ずつ、合計4名までが出場可能。

参加条件

  • 2008年12月31日以前の出生
  • WDSF(世界ダンススポーツ連盟)とJDSF(日本ダンススポーツ連盟)への選手登録
    ※日本人の場合

採点方式

オリンピック本戦におけるジャッジルール/採点方式の詳細について、WDSFからの明言はまだ無い。
とはいえ予選会の位置付けでもある各種選手権大会のいくつかは既に開催されており、ルールとしてはそれらを踏襲するのでは、というのが現時点の一般的な見解となっている。
例えば全日本選手権はJDSFの定める以下の基準により採点が行われた。

  • 技術(Technique,Body)
    難易度(Difficulties)、バリエーション(Variation)、ボディコントロール(Body Control)、クリーンさスムーズさ(Cleanliness/Smooth) を40点満点で評価(4項目×10点)
  • 表現(Personality,Originality)
    雰囲気の独自性(Flavor)、オリジナル(Originality)、トランジション(Transition)、ディテール(Detail) を40点満点で評価(4項目×10点)
  • 総合性(Total balance)
    構成(Constitution)、完成度(Execution)、音楽性(Musicality)、パフォーマンス/バトル(Performance,Battle) を40点満点で評価(4項目×10点)

どのように出場者が選出されるのか

オリンピック出場者16名の選出は以下の内訳となる。

世界選手権優勝者:1名

2023年9月23日-9月24日にベルギーで開催予定。この大会には各国から男女2名ずつが出場可能で、日本ではオリンピック強化指定選手から選出される。強化選手にはJDSF(日本ダンススポーツ連盟)が主催する選手権大会の実績により加入することができる。

5大陸大会優勝者:5名

アフリカ, アジア, ヨーロッパ, オセアニア, パンアメリカ で行われる選考会の優勝者各1名
WDSF(世界ダンススポーツ連盟)が主催し世界各地で行う大会「Breakin for Gold」の成績により獲得するワールドランキングポイントの上位から各大陸開催エリアを踏まえて出場者が選ばれる。

オリンピック クオリファイ シリーズ(OQS)上位者:10名

2024年3月-6月に3都市3大会開催されるオリンピックの最終予選会。各国から男子3名・女子3名が出場可能。参加者は前述の世界選手権と5大陸大会の上位者、「Breakin for Gold」の成績により獲得するワールドランキングポイントの上位者から選出される。
ただし、このOQS参加者から選定されるオリンピック出場者10名は以下の内訳となっており、

  • 開催国(フランス)枠:1名
  • 大会委員推薦枠:2名
  • QOS実施による上位者:7名

純粋にバトルの結果により選出されるのは7名となる。

誰が有力候補なのか

世界の有力候補

各国で代表者を選別する形式ではなく世界で本戦出場者16名をピックアップするため、各種予選会を主催するWDSFのワールドランキング上位者がオリンピック出場に最も近いと言える。2023年4月1日時点のTop10は以下。

BBoy_World Ranking

  • 1st: Dany (France)
  • 2nd: Jeffro (US)
  • 3rd: Shigekix (Japan)
  • 4th: Kuzya (Ukraine)
  • 5th: Phil Wizard (Canada)
  • 6th: Amir (Kazakhstan)
  • 7th: Kid Karam (England)
  • 8th: Wigol (Poland)
  • 9th: Lussy Sky (Ukraine)
  • 10th: Gravity (US)

BGirl_World Ranking

  • 1st: Ami (Japan)
  • 2nd: Anti (Italy)
  • 3rd: 671 (China)
  • 4th: India (Holland)
  • 5th: Nicka (Lithuania)
  • 6th: Ayumi (Japan)
  • 7th: Vanessa (Portugal)
  • 8th: Senorita Carlota (France)
  • 9th: Alessandrina (Italy)
  • 10th: Sunny (US)

日本の有力候補

基本的にはWDSFワールドランキング上位者が有力候補といえる。2023年4月1日時点では、BBoyはShigekix(ランク3位)、Issin(ランク19位)、Toa(ランク25位)、BGirlではAmi(ランク1位)、Ayumi(ランク6位)、Riko(ランク13位)、Ayane(ランク31位)がTop50内にリストアップされている。

また日本では世界選手権の出場者が強化選手から選ばれる。前述の通り、世界選手権優勝はオリンピック出場に直結するほか、その成績がクオリファイシリーズへの出場にも繋がるため、強化選手になることが重要だ。強化選手は2月に開催された全日本選手権の実績をもとに招集されており、ShigekixやAmiはそこに含まれている。

日本はかねてよりブレイクダンス強豪国として知られ、オリンピックにおいてもゴールドメダルが期待される。2024年8月のパリオリンピック開催まであと1年数ヶ月、本戦出場者が誰になるのか・日本勢は何名そこに食い込めるのか、まずはそれを楽しみにしたい。

以下出典
https://olympics.com/ja/news/how-to-qualify-paris-2024-breaking-qualification-system-explained
https://breaking.jdsf.jp/
https://www.breakingforgold.com/

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