近年、メディアやSNSを通じてブレイクダンスを目にする機会はとても多くなりました。2024年パリオリンピックでは、ブレイクダンスが「Breakin'(ブレイキン)」の名称で新たに競技として採用されています。そうした背景の中、ブレイクダンスはスポーツとしての普及が進んでおり、女性や子どもを含む競技人口も増え続けています。
ここでは新たにブレイクダンスを始めたい方、子どもの習い事にしようか検討中の方に向けて「ブレイクダンスはどこで習えばよいのか」「どういった環境で練習するものなのか」「費用はどれほど掛かるのか」「どのように練習し活動していくものなのか」について、解説しています。
どこで習えばよいのか
最初は教えてもらえる環境で始める
最も手軽でお金を掛けない方法は独学でスタートすることですが、以下の理由からまずは誰かに教えてもらえる環境に身を投じた方がいいと考えています。
- ブレイクダンスとその練習方法を体系的に知った方がよい
そもそもどんなダンスなのか、どんな環境でどんな練習をすればよいのか、基礎的な体の動かし方を体感しながら知る - 情報収集できる
技のコツや練習場所の情報などを周囲と会話して知ることができる、友人など人脈を作れる
この二点はとても重要で、後の練習効率やダンス活動のしやすさに大きく影響します。筆者は15歳の頃にDVDなどを見て独学で練習をスタートさせましたが、のちにダンススクールへ行ったところ自分がいかに自分の想像だけの世界で見当違いなことをやっていたかに気づきました。
やり続けるかわからないからちょっとなあ・・という方もブレイクダンスがどういうものかをちゃんと知る意味でも一度ダンススクールの体験レッスンなどに行ってみた方が、結果やる/やらないを決めやすいと思います。
教えてくれる環境にはどんな種類があるのか
誰かに教えてもらおうと思った時には以下の選択肢があります。
- ①ブレイクダンサーが身近にいる、紹介してもらえる
- ②大学のサークルに入る、高校の部活や同好会に入る
- ③ダンススクール/ダンススタジオのレッスンを受ける
- ④ワークショップに参加する
まず①が可能ならそれがいいと思います。練習場所があるはずなので同行して身近な経験者に教えてもらうのが一番いいです。とはいえ、この選択肢を取れる人はあまり多くはないかもしれません。
学生なら②がよいでしょう、基本的に歓迎されるでしょうし先輩から練習方法を丁寧に教えてもらえると思います。また大学のサークル活動には他大学の学生が参加できることもあるので、連絡先やソーシャルアカウントを知っていれば連絡してみるのもよいと思います。また①②の場合、費用はほとんど掛からないと思います。
社会人もしくはダンス部が身近にない学生の場合は③がよいでしょう。ダンススクールの詳細は後述します。
④はダンススクールや実績のあるダンサー個人が単発で企画するレッスン会のことです。主催するダンサーが自分の得意なテーマをレクチャーする専門的で上級者向けのものもあれば、入門者向けのものもあります。単発で行われるため定期的に習いたい場合には不向きであり、その情報を見つけること自体が難しいのですが、地方の体育館などで行われることもあるため、SNSや運動施設の張り紙などで見つけた際には、参加してみるとブレイクダンスを始めるきっかけにはなると思います。数百円〜3000円程度が相場でしょう。
ダンススクールについて
ダンススクールと聞くと、なんとなく”学校”を連想しますが、習い事と同じで単発の受講チケットや月額料金を毎回払ってレッスンを受ける形式が一般的です。ヒップホップ、ジャズ、ポップ、ロック、ブレイクなど複数のストリートダンスのコースが併設されており、曜日と時間帯を区切って各ジャンルのレッスンがスケジューリングされているので、自分が参加したいものを選んで受講します。1回あたりのレッスン時間はだいたい50-90分です。
スクールにより料金体系は異なりますが、初回は入会金として3,000-5,000円程度、受講料金として1レッスンあたり2,000-3,000円程度(週1で受講して月間1万円ぐらい)、このあたりが相場だと思います。料金は各スクールのウェブサイトに記載されているので、最寄りのスクールを調べてみるとよいでしょう。
どういった環境で練習するものなのか
ダンススクールや大学で練習する場合はその施設のスタジオやフリースペースが練習場所になりますが、他にはどんな場所が適しているのでしょうか。前提として、ブレイクダンスの練習環境で最も重要なのはフロアです。練習しやすい床さえあれば基本的にどこでも大丈夫ですし、それ以上は必要ありません。
練習しやすい床とは、おうとつや溝がなく摩擦が少ない床のことで、フローリングや大理石、硬くなめらかにコーティングされたフロアマットなどを指します。地面に手や頭をついたり、体をつけて回転したりするので接地面がざらざらしていたり、タイル調で溝があったり、摩擦が高いような場所では満足な練習はできません。
その他の要素としては「鏡」と「音楽が流せる環境」がありますが、さして障害にはなりません。他のストリートダンスでは自分の動きを確認するために鏡は重要な備品ですが、ブレイクダンスの場合はそもそも技の最中にずっと鏡を見ていることはできないので多くの人がスマホで動画を撮って自分の動きを確認します。そのため鏡はあった方がよいですが、無くても全く問題ありません。また練習の際は常に音楽を流すため近隣に迷惑をかけない環境や配慮が必要になりますが、スピーカーの音が騒音と扱われそうな場所であれば、イヤホンで音楽を流せばよいだけです。
そうした前提を踏まえ、ブレイクダンサーは以下のような場所で練習しています。
- 体育館やスポーツセンター
行政が運営する体育館やスポーツセンターでは団体予約が入っていない時間に体育室やフィットネスジムを一般解放していることがあります。数百円で利用できるので近場の施設を調べてみるとよいでしょう。 - ダンススタジオ
ダンススクールがレッスンではなく練習会形式でスタジオを有料開放していることがあります。こちらも数百円程度で利用できるので、近場にあれば調べてみるとよいでしょう。 - ストリート
駅や大規模なビル付近の空きスペースが練習場所になっていることがあります。多くのダンサーが集まる場所は施設管理者に了解をもらっていたり、長年定着していて黙認されているケースが多く、22時以降なら使用してよいなど近隣や通行者に迷惑をかけないための暗黙的な利用ルールがあることもあります。まずはそこで練習しているダンサーに声を掛けて自分もその場所で練習して大丈夫そうか聞いてみるとよいと思います。
たとえば、関東圏なら「JR武蔵溝ノ口駅」や「JR浦和駅の地下通路」、関西なら「OCAT」などが古くからあり有名かと思います。 - 自宅
室内であればフローリングで3m四方の障害物のない空間が確保でき、物音が近隣の迷惑にならなければ、軽く動くくらいの練習はできると思います。
また屋外ではコンクリートで舗装された平らな駐車場などのスペースがあれば、そこに2m四方のフロアマットを敷いてある程度満足に練習できます。フロアマットはホームセンターやドンキホーテに1m×2mサイズが1,000円ほどで売っているので、それを2つ買ってテープでくっつける人が多いと思います。
費用はどれほど掛かるのか
費用は大きく「ダンススクールに通う場合のレッスン代」「準備物や道具にかかる費用」に分けられます。レッスン代を除けばほぼ費用はかからないと思ってよいでしょう。
- レッスン代
前述の通り、入会金3,000-5,000円程度、受講料金1レッスンあたり2,000-3,000円程度(週1で受講して月間1万円ぐらい) - 準備物や道具の費用
前提として専用の道具は必要ありません。動きやすい服とスニーカーがあれば十分で、持っていなくても1万円もかけずに揃えられるでしょう。
参考にその他準備しておいてもよいものを以下の記事にまとめています。
ブレイクダンスを始める時の準備物について 【服装/道具】
どのように練習し活動していくものなのか
どのように自立していくか
まずはダンススクールなど体系的に教えてもらえる場所で練習しつつ、それと並行して個人でも場所を探して練習してみましょう。だいたい半年から1年かけて基本となる立ち踊りとフットワーク、入門-初級レベルの技、そしてウィンドミルを習得することをひとまずの目標にします。
そこまでできるようになれば、基礎知識や練習方法は十分身についているはずなので、それまでの過程で知った練習場所や知り合った仲間とコミュニケーションを取りながら個人練習メインに切り替えてよいと思います。その際スクールを不要に感じたら退会してもいいでしょう。ブレイクダンスはいかに自分と向き合い体の使い方を体得するかが重要なので、基本ができればお役御免とも思います。ただし自分よりもうまい人に教えてもらう方が技の上達は早いのでスクールのメニューと自分が感じる必要性で継続するかを判断してよいと思います。子どもの場合は仲間づくりや部活的な意味合いも込めて、少なくとも中学校いっぱいはスクールを続けてもよいのかなと思います。
なお、入門的な動きや技にどんなものがあるかを以下の記事にまとめています。
- 立ち踊りの基礎:ブレイクダンス技リスト – トップロック編【動画付き】
- フットワークの基礎:ブレイクダンス技リスト – フットワーク編【動画付き】
- 初級技一覧:ブレイクダンス技リスト – 初級技編【動画付き】
大会など勝敗を競う場にはどんなものがあるか
ブレイクダンスを公に披露する場として「バトルイベント」「コンテスト」の二つがあります。
- バトルイベントについて
アメリカのギャングが平和的に争いを解決する手段として生みだした、というのがブレイクダンスの起源と呼ばれるほど”対決”の概念がブレイクダンスカルチャーの根底に流れています。そのためブレイクダンスの大会というと、まずダンスバトルを指します。
ダンスバトルは「チーム対決」「1対1」「2対2」「3対3」などいくつかの人数形式があり、いずれも交互に1分ほどで自分が考えた一連の動きを繰り出して、どちらが優れていたかを審査員が判断し勝敗を決めます。元来、バトルに男女や大人子どもの区別は無く全ての人が同じ土俵でバトルをしていましたが、近年スポーツ化が進み女性部門やキッズ部門を分けて実施することも増えてきました。
国内・海外問わず国際的で大規模なバトルから地方のローカルイベントまで大小様々なイベントが年中開催されており、基本的には自由にエントリーしイベントに参加できます。特に大きな大会としては「Battle of The Year」「Freestyle Session」「Red Bull BC One」などがあります。 - コンテスト
チームで振り付けを考えてショウケースを構成し、その優劣を競うコンテストに出場します。コンテストの出場チームはブレイクダンスのみでは無く、他のストリートダンスジャンルと混合になることがほとんどで、審査員はそれを横並びに評価して順位を決めます。
国内の大きなコンテストとしては「Dance Delight」などがあります。
何を目標にブレイクダンスに取り組んでいくか
多くのブレイクダンサーが目標にするのは「技の習得・ダンスの上達」と「ダンスバトルで勝つこと」です。世の中の多くの人ができない超人的な技を習得していく達成感・充実感は大きな醍醐味だと思います。またバトルは鍛錬の成果を披露する舞台であり、練習から続く活動の一つの終着点になります。そこで勝つことによって充実感はさらに高まり、好成績を収めればダンサーとしてのキャリアを築くこともできるでしょう。
したがって日々の練習ではダンスや技の上達とバトルでの勝利のために、自分の動きを構築して練り上げていくことが焦点になります。バトルでは「動きが正確で美しいか」「音楽に合わせて動いているか」「難易度の高い技を成功させたか」「動きにオリジナリティがあるか」などを評価して勝敗を判断するため、そうした観点を鍛えられるように練習を行います。
以上、ブレイクダンスを始める際に気になりそうな点をまとめました。ブレイクダンスは球技や武道など他のスポーツに比べ初期費用はほとんどかからず、オープンで誰でも気軽に始められることが魅力の一つだと思います。もし迷っている場合は思い切って飛び込んでみてはいかがでしょう!
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